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第八十七話 決裂の影 ― それぞれの覚悟

Penulis: marimo
last update Terakhir Diperbarui: 2025-12-23 08:46:56

空港のVIPラウンジを出た瞬間、

 廊下に並ぶ照明はまるで舞台のスポットライトのように龍一の背を照らした。

 だが、その表情は読めない。

 一方、個室に残された天城壮真は、ソファに深く体を預け、しばらく天井を見つめていた。

 「……桐嶋龍一、か」

 その口元に浮いたのは、嘲笑とも興味ともつかない笑み。

 「黒澤も鷲尾も……ようもまあ、あんなもんに楯突こう思たわ」

 黒澤の末路は、もはや確定していた。

 天城にとって裏切りは“死刑宣告”より重い。

 しかも、よりによって外の勢力と組んで私腹を肥やそうとしていたのだ。

 「……20億か。ええ値段つけよったな、桐嶋」

 金で動く男ではない。

 だが――合理には動く男だ。

 玲華を狙っていたのも、感情ではない。

 黎明を揺さぶり、柊 蓮の動きを封じるための“手段”に過ぎなかった。

 そして今、その計画は黒澤の裏切りで台無しになっている。

 ならば。

 「せやな……今は手ぇ引いたるのが得策か」

 天城はゆっくり立ち上がった。

 だが、その眼差しには冷たい光が宿り続けている。

 「ただし――覚えとけよ、桐嶋龍一。ウチは駒を切り捨てるんは早いで。

  けど……敵を許すんは一番遅い」

 それは、龍一に向けた警告か、あるいは黒澤の“遺影”に対する宣告か。

 どちらとも取れる言葉だった。

 龍一は空港を出ると、外に待機していた黒のセダンへ乗り込んだ。

 運転席の灰島が振り返る。

 「……全部、お済みになったんですか」

 「ああ。天城は納得した」

 灰島の表情には安心が浮かんだが、同時に僅かな不安も漂う。

 「ですが、天城壮真がそう簡単に手を引くとは……」

 「安心するなよ、灰島。あの男は“表向き”手を引くだけだ」

 龍一の目が、夜の空港の闇を見据える。

 「裏では必ず動く。ただ――玲華に刃を向ける選択肢は、完全に潰した。あとは黎明コーポレーションが形をつける番だ」

 「……なるほど」

 桐嶋龍一という男の恐ろしさは、暴力ではなく“選択肢を奪う”ことにある。

 敵の武器を一つずつねじ伏せ、気づけば唯一残された道が、龍一の用意したルートになっている。今回もそれは同じだった。

 玲華を狙わせないために――黒澤の裏切りを利用し、天城の利益を用意し、港湾ルートから手を引かせた。そして、黎明コーポレーションの柊 蓮には、これか
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